その13
ゆっくりと歩みだした荷馬車も、
闘士ケンプファーから離れるほどに速度を上げていき、
とうとう見えなくなってしまった。
闘士ドーベンウルフ
「あ、あいつら、ほんとに行かせちまうんだすか?
ワラを突いたらワラが動いたんだすよ?」
闘士ケンプファー
「よいか…落ち武者の首を取るなど侠の恥よ。
あいつ、こちらを見て完全に萎縮しておったわい。
逃がしてやれい。どうせ何も出来まい」
戦士ガブスレイ
「何か隠し事をしているとは思いましたが、私はその考えに反対でございます。
奴の目は死んでませんでした。
ほおっておけば、きっと我らの前に立ちふさがります」
闘士ドーベンウルフ
「おらも戦士ガブスレイに賛成だす。
兄貴にゃ悪いが単独行動させてもらうだす」
二人は急いで荷馬車を追いかけて行った。
闘士ケンプファー
「やれやれ…まだ地上に降りて間もなく、
武門一族の我々だって戦ばかりしてれば、おまんまにありつけるわけじゃない。
塔の建材の運搬方法を確保・整備する仕事だって残っているというに…」