その12
ワラの中に待機する剣士一同は、
手元の剣に手をかける。無言ながらその場に緊張が走った。
バレてしまう前に先手を取っておきたい。
外のやり取りから、各自が飛び出すタイミングをうかがった。
剣士リ・ガズィ
「いやー、高名な剣士様と間違われるだなんて…
めっそうもありません。ただの百姓でございます。はい」
引きつった笑い顔で取り繕い誤魔化そうとしが、
ワラの中からの殺気と、目の前の敵とで板ばさみにあい、
脂汗が噴き出した。
闘士ドーベンウルフ
「いや、こいつ怪しいだす!
さっきだって一人きりで喋りながら荷馬車を引いてました。
おい!荷馬車だけでも調べさせるだすよ」
グサッ
闘士ドーベンウルフが荷馬車のワラに剣を突き刺した。
幸運にも剣士の誰にも刺さらなかった。
闘士ケンプファー
「もうよいわ、百姓一人相手にするほど我らも暇ではない。
百姓よ、先を急ぐといい。手間を取らせて悪かったな。
もしアルガス騎士団を見かけたら騎士ゼノマンサ様へ知らてくれい」
剣士リ・ガズィ
「へへ、ようやくご理解いただけたようで。
では失礼をば」