その88
・88
リ・ガズィシャドーの手が一瞬止まる。
「正気か兄弟!
だが、油断も手加減もせぬ、
ただ斬るのみ!」
剣士リ・ガズィ
「…正気さ。やっと正気になったんだ。
他人を疑えば、
世界には自分しか居なくなる。
そんなの寂しいとは思わないのか?」
リ・ガズィシャドー
「…違う、
そうじゃない…」
剣士リ・ガズィ
「君は僕に教えてくれた、自分の本当の気持ちを。
僕は確かに剣士ゼータに劣等感を持っていた。
…でも、それが僕の原動力でもあった。
彼の背中は今でも僕の生きる規範なんだ。
僕は自分独りでは何も出来ない弱い生き物だ。
それは君にも否定できないはずだよ、
君は僕なんだから…」
リ・ガズィシャドー
「…体に力が入らん!
どういうことだ兄弟!
俺が消えてゆく…だと…」
リ・ガズィシャドーは消滅した。
「僕の世界で、彼だけが本物だった。
でも、やっぱり肉体は僕の幻想から作り出していたのか…」